10年ほど前、ラジオ番組を聴いていたら「野菜ソムリエ」という聞き慣れない言葉が耳に入ってきました。
某芸能人の方が野菜ソムリエの資格を取得し、とある飲食店のプロデュースをしたとのこと。
当時は「へぇ、そんな資格があるんだ?」と聞き流していたのですが、最近ではメディアでも取り上げられることも多いようで気になっていました。
今回ご縁があって、日本野菜ソムリエ協会養成講座の食べ比べ/説明会に参加できることになったので、そのレポートをまとめました。
野菜ソムリエとは?
野菜ソムリエ(旧シニア野菜ソムリエ)は2001年に誕生した「一般社団法人日本野菜ソムリエ協会」が認定している民間資格です。
野菜ソムリエの資格を取ることをきっかけに、野菜・果物の幅広い知識を身につけ、家族の健康管理や、食に関する仕事に役立てることが主な活動です。
食に関わる資格はたくさんありますが、日本野菜ソムリエ協会は他の資格とどう違うのか?協会の方針や考えを説明会にて聞いてきました。
説明会はどんな内容なのか?
日本野菜ソムリエ協会養成講座の説明会は4部構成(約1時間半)で行われました。
野菜ソムリエ養成講座の概要説明
資格取得目的と意識の変化
野菜ソムリエの資格取得の目的はキャリアアップが6割、自分や家族の健康のためが約3割。
キャリアアップと答えた方の7割が「転職・昇給など仕事に役立った」と答え、健康のためと答えた方の6割が「健康を実感している」とのこと。
野菜ソムリエを受講・資格を取った後は、知らなかった野菜を手に取るようになったり、サプリメントから野菜を取るようになったりと、野菜に対する意識が変わったようです。
協会の設立時期と受講生の内訳
一般社団法人日本野菜ソムリエ協会は2001年8月に設立しました。2001年といえば、牛肉偽装問題があった時期で、食生活を見直すきっかけにもなった年でした。
2019年8月の時点で受講者数は64,473名/資格取得者が57,449名です。
内訳は20代が27%、30代が40%、40代が19%、50代が10%となっていて、転職を考えている方や主婦層が中心と思われる30代が一番多い分布となっています。
面白いのは職業別の分布で、食関連以外の会社員が全体の33%で、食関連事業者の19%よりも多いこと。てっきり食関連の方がほとんどかと思いましたが、取り扱う食関連の仕事の関係からでしょうか?キャリアアップと答えた方が7割というのもうなずけます。
日本野菜ソムリエ協会の理念と活動内容
日本野菜ソムリエ協会の理念は以下の通りです。
- 農業を次世代に継承する
- 日常的に食を楽しめる社会を創造する
説明会の中で、野菜ソムリエ有資格者のインタビュー動画が流れていたのですが、その中で「農家と消費者との架け橋になる」という目的で活動していると話されていた方がいらっしゃいました。
その他に「自分で選べる目を持つ」ということと、資格を取って終わりではなく「資格を取ってからが本番」という、いわゆる「資格ビジネス」とは違うということも話されていて、上記理念に基づいて活動されているんだと感じました。
野菜ソムリエSDGs(エスディージーズ)宣言
2015年9月、国連サミットの中で決められた国際社会共通の目標「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であるSDGs(エスディージーズ)という目標が決められました。
2001年に策定されたミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)の後継として国連で定められた、2016年から2030年までの国際目標。MDGsの残された課題(例:保健、教育)や新たに顕在化した課題(例:環境、格差拡大)に対応すべく、新たに17ゴール・169ターゲットからなる持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)を策定。7回に及ぶ政府間交渉を経て、本年8月に実質合意された。
野菜ソムリエ協会はこのSDGsに賛同。そして「SDGs宣言」として策定し、野菜ソムリエを通じて学習機会を提供するとのこと。
- 食材を選ぶ力
- 食材を使いきる力
- 栄養バランスを考える力
この3点を学び、それぞれの野菜ソムリエ達の活動によって、フードロスをはじめとする環境問題の解決に取り組んでいくそうです。
SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform
資格取得者によるバナナの食べ比べと現在までの体験談
概要の説明が終わり、次は現役野菜ソムリエの山崎ゆりかさんにバトンタッチしました。
バナナの生産地の情報
バナナの食べ比べを始める前に、まずはバナナの解説からです。バナナの生産は「バナナベルト地帯」と呼ばれる、赤道をはさんだ南緯30度から北緯30度までの間で栽培されているそうです。
バナナの植物学 |バナナ大学 – バナナの情報総合サイト –
国別ではインドが世界一の生産量ですが、国内消費が多く輸出はほとんど無く、日本に輸入してくるバナナはフィリピンやエクアドル産とのこと。
国内では沖縄の島バナナが産地としてトップで、最近では岡山産のバナナが注目されているとのことでした。
バナナの食べ比べ
バナナ生産の説明が終わると、いよいよバナナの食べ比べです。もう部屋中にバナナの甘い香りが充満して大変でした(笑)
3種類のバナナと、バナナに関する感想を書く用紙が一緒に配られ、表には「外観」「香り」「食味」「食感」という項目があり、それぞれのバナナを食べ比べて、用紙に記載していきました。
隣の方と談笑をしながらバナナを眺め、匂いを嗅ぎ、口の中で味を確かめることを繰り返しました。
実は私、バナナをあまり食べないというか、南国フルーツ全般があんまり得意ではないので、こんなにもバナナを味わって食べることがないので…ものすごい新鮮な気持ちに(笑)
食べ比べて、いざ用紙に書き込もうとすると「すごく甘い」「ねっとりする」「甘い香りがする」ビックリするぐらい自分のボキャブラリーのなさに思わず笑ってしまいました。
その後、食べ比べをした3種のバナナのどれが気に入ったかを集計し、何人かの人に感想を聞いたあと、シュガースポット(熟成が進んでバナナの皮に黒い斑点ができる)の事や、バナナの保存方法を教えてくれました。
このことで「どう表現したら、食材のおいしさをわかりやすく伝えられるのか?」ということが、野菜ソムリエとしてやっていく上で必要なことだと実感しました。
野菜ソムリエを取得するきっかけ
今回講師役を担当していただいた野菜ソムリエの山崎さんは、野菜ソムリエの資格を取得して10年目。野菜ソムリエを取得したきっかけは旦那様の転職でした。
旦那様が手に職をつけたい(料理関係)という理由から、色々調べた結果「野菜ソムリエの資格がいいのでは?」ということになり、山崎さんも一緒に資格を取ることになったそうです。
受講中・受講後の様子
受講中はとにかく楽しく学べ、あっという間に時間が過ぎ、野菜ソムリエの資格を取得。そのときに思った事は「資格を取ってから何をするか?」ということでした。
野菜ソムリエとしての初仕事
資格取得後、協会のサポートを受けながら勉強を続けて、野菜ソムリエとしてのお仕事デビューは野菜教室でした。テーマの野菜を決め、授業を2時間行いました。
人前で話すこともほとんどなかったけど、緊張しながらも初仕事を無事終え、自信がついたそうです。
現在は野菜ソムリエの講師としてだけでなく、野菜ソムリエが所属できる公式コミュニティに入会し、副代表を務めているとのこと。
資格取得後はどのように活動していくか?
野菜ソムリエの資格を取得後、皆さんはどのような活動をしていくのでしょうか?山崎さん曰く「スタッフに頼って下さい」とおっしゃってました。
資格取得後は、以下の様な活動が控えています。
- 山崎さんも所属されている「野菜ソムリエコミュニティ」への参加
- すばらしい活動をした野菜ソムリエを選出する「野菜ソムリエアワード」
- 野菜ソムリエを職業としてやりたい方と、協会に依頼されたお仕事をマッチングする「野菜ソムリエカンパニー」
- 野菜ソムリエが評価員となって、野菜・果物とその加工品の品評を行う「野菜ソムリエサミット」
野菜ソムリエアワードの様子は、日本野菜ソムリエ協会公式YouTubeチャンネルで配信しています。どんな人が野菜ソムリエをやっているのかという雰囲気もわかりますよ。
第8回野菜ソムリエアワードダイジェスト
第8回野菜ソムリエアワードのコミュニティ部門銀賞、野菜ソムリエコミュニティTOKYO
その他、講師になるためのスキルアップセミナーなど、協会側がバックアップとサポートをしてくれます。
野菜ソムリエのメインになる活動は、協会主催のイベント企画出演や講師業、雑誌などのメディア出演のお仕事が中心で、協会側が各野菜ソムリエへの適性を踏まえてお仕事を斡旋してくれるとのこと。
資格を取って終わりじゃなく、しっかりしたサポートがあり、しっかり結果として出せていることも、認知度が高くなった理由なのかもしれません。
野菜ソムリエへのコース説明と受講方法
体験談のあとは、野菜ソムリエを受講するコースの説明と受講方法の説明です。
資格は全部で3コース
野菜ソムリエコースは全部で3つあります。
野菜ソムリエコース
野菜ソムリエコースでは、野菜や果物の基礎知識と、伝え方のノウハウを身につけます。それを元に、生活力の向上や職場でのスキルアップに繋げていくことを目指すスペシャリストを育成するコースです。
カリキュラムは全7科目(1科目2時間)で、受講料は148,000円(税込)です。
資格取得には、決められた課題提出(ベジフルカルテ8枚)と修了試験(マークシート形式)に合格すれば、認定書が発行されて資格を取得できます。(合格率80%)
進学制度 野菜ソムリエコースを修了したあとは、野菜ソムリエプロコースに進学することができます。
野菜ソムリエプロコース
野菜・果物の専門的な知識を身につけ、青果物のスペシャリストとして社会に価値を伝えることができるスペシャリストを育成するコースです。
野菜ソムリエの資格を取った後に、どのように活動をしていくか?どうすればいいのか?を学びます。
カリキュラムは全18科目(1科目2時間)で、受講料は320,500円(税込)です。
野菜ソムリエプロコースのカリキュラムは、前半の7科目が野菜ソムリエコースと内容が同じです。はじめから野菜ソムリエプロコースを受ける場合は18科目になり、野菜ソムリエコース修了後に進学した方は、後半11科目を受講することになります。
資格取得には、一次試験と二次試験の合格が必須になります。
一次試験(年に7〜8回/全国統一)
課題提出(ベジフルノート10枚+栽培ノート)
筆記試験(500点中350点以上)
二次試験
プレゼン・面接
二次試験まで合格すると資格が取得できます。(合格率35%)
更新制度 プロコースは年に一度資格の更新があります。更新条件は「野菜ソムリエメンバーズ」(年会費6,000円)という有料会員への登録で、特典として認定カードほ付与、名刺や会誌の発行、グッズの割引があります。
野菜ソムリエ上級プロコース
野菜ソムリエを生業とし、自身の専門分野において社会で活躍できる人材を目指すコースです。
野菜ソムリエプロコースの有資格者かつ、実績がある方に受験資格がある最上位コースです。今回は野菜ソムリエプロまでの説明がメインだったので、プロ以上のコースがあるという事のみにとどめておきます。
受講スタイル
受講スタイルは以下の4つになります。
通学制
全国の協会指定会場で、講師やクラスメートと直接対話をしながらの受講が可能。
同じ科目が複数の場所/違う日程で行われているので、ご自身のスケジュールの都合で決められた科目を受けられない場合でも、振替受講が可能です。
通信制
全科目のテキストと教材を使って自分のペースで学習をし、試験のみ協会指定会場で受験をします。
半通学制
座学は通信教材を使って自宅で勉強し、食べ比べなどの体験講座は教室で行います。
通信制(地域校ワーク付)
座学は通信教材を使って自宅で勉強し、全国各地の地域校で食べ比べ体験、一部のワーク、修了試験を受けることができます。
質疑応答
山崎さんの経験談と、資格の構成や受講方法を一通り聞いた後、野菜ソムリエの山崎さんへの質疑応答の時間になりました。
参加者の方々からの質問に答えていただき、気になった質問をピックアップしていきます。
Q.野菜ソムリエと同じような資格が他にもあるけど、野菜ソムリエに決めたきっかけは?
テレビで野菜ソムリエを見たときに、ココロを打ち抜かれたそうです(笑)
それと、旦那様が将来お店をやりたいという話もあったそうで、そのときに「野菜ソムリエの居るお店」という冠が欲しかったとのこと。
Q.受講料が少し高いのでは?
自分自身は手頃だと思っていたけど…少し高いかな?とも思ったそうです。ですが、元を取るためにがんばったとのこと(笑)
Q.野菜ソムリエに必要なことはなんですか?
ワインソムリエがワインのことを教えてくれるのと同じく、野菜ソムリエも野菜や果物の味を含めた良い所を伝えるための「表現力」が一番大事とのこと。
そのために、資格を取った後も勉強や調査を続け、その知識を元にわかりやすく伝える表現力の勉強が欠かせないそうです。
他の野菜ソムリエさんの経験談
山崎さん以外の野菜ソムリエのインタビューもありましたので、ぜひチェックしてみてください。
野菜ソムリエプロ 本間 純子さん
野菜ソムリエプロ 堀 基子さん
野菜ソムリエ上級プロ 高原和江さん
あんじゅの思うトコロ
今回紹介した野菜ソムリエに関して、自分がもし受講すると仮定してじっくり考えてみました。
「野菜ソムリエの資格が持てる」というメリットもありますが「資格を取ろう」と思うきっかけから「自分がどういった活動をしていきたいか?」ということを見直すことが一番大きかったです。
野菜ソムリエを受講する理由は様々です。はじめから「野菜ソムリエプロになって仕事をする!」という方もいらっしゃるかもしれませんが、説明会の話を聞いていると「まずは自分の健康や食生活を見つめ直す」ことを真っ先に考えました。
食に対する考え方が変わってきた
私は今、食に関しての活動をしていますが、10代20代の時は「空腹が満たせればいい」「好きなものを好きなだけ食べる」と思っていた時期がありました。
若気の至りというか、そのときはそれでよかったかもしれません(笑)
ですが、自分が40代後半になってからは食事の量も減りましたし、そして食べるものの志向も変わって来ました。
そして現在は「量より質。できるだけ美味しいものを食べたい」「可能であれば健康にいいものを食べたい」という考えです。
1回1回の食事にも気をつけるようになれば、食事に欠かせない野菜や果物の選び方、それらにどんな栄養があるのか?という事も気になってきます。
そして美味しく食べられる調理法などの知識を得ることで、自分も含め、イベントなどで食事を提供するお客さんの健康に活かすことができるのではないかと。
もちろん、資格を取るだけではすべてをカバーできるワケではありません。受講をきっかけとして継続的にインプットとアウトプットを繰り返すことになります。
そういった経験を積み重ねていき、その知識を自分以外の消費者(社会)に伝える仕事になるのって、すごくいいなぁと思いました。
生涯やり続けられる仕事(活動)になるかも
親が飲食店を営んでいたこともあり、私自身、飲食店での仕事も経験してきたので「食」に関わる仕事=料理人というイメージがとても強いんです。
それはそれでいいんですが、「食」に関わる仕事って、料理を提供するだけでなく、知識や経験を「伝える」仕事もアリだよねって思ったんです。
体力的に料理人をすることがしんどくなっても、経験や知識を伝えるスキルを持っていれば「料理人」というフィールドとは違いますが、食に関わる仕事は継続することができます。
「食」は生きていく上で切っても切り離せない存在ですし、「食」に関する仕事(活動)であれば、年齢に関係なくずっと続けられます。
「食」に関して、伝えたいものと伝えたい人の架け橋的な存在になり、それを仕事としてやっていくひとつの方法として、自分の将来のことを考えてみると、野菜ソムリエは十分に価値がある存在だなと思いました。
これが唯一の正解ではありませんが、この記事を読んでみて「自分や家族の健康を見直してみたい」「ぼんやりと食に関する仕事をやってみたい」と思われたら、野菜ソムリエを受講することも視野に入れてみてはいかがでしょうか?
無料説明会は定期的に開催中
今回紹介した無料養成講座(+食べ比べ体験)説明会は全国の教室で行われています。
気になった方は、野菜ソムリエ協会公式サイトにて申込みをしてみてください。これから自分がどういった活動をしてみたいのかの指針になると思います。
説明会に参加すれば現場の雰囲気がわかりますし、なにより第一線で活躍されている野菜ソムリエさんに直接質問できるのが一番のメリットですよ!
気になった方は、気軽に参加してみて下さいね(*´∀`*)
今日のPickup・Insta!
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